ここ数年、企業の早期退職募集のニュースをよく聞くようになりました。大企業と言えども安泰ではありません。自らの意思で、あるいは致し方なく退職に追い込まれる方も多いかと思います。勿論、再就職先があれば問題ないのですが、年齢が上がるほど再就職が難しくなってくるのも事実です。
そして、早期退職、アーリーリタイアという道を選択する事になるかもしれません。
また、最近「FIRE」(Financial Independence, Retirely Early)が一つの生き方の選択肢として注目され、それを目指して資産運用に励む方も多くなってきました。
され、それでは早期退職、アーリーリタイアする為には、いくらの資産があれば良いのでしょうか?
インフレ等を考慮して計算してみます。
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早期退職・アーリーリタイアする為に必要な資産額
計算の前提条件
- 夫婦二人とも90歳まで生きる
- リタイア後の支出は、最低限の生活で年額265万円、ゆとりのある生活で433万円、その中間の「プチゆとり」として350万円の3通りで計算。
*最低限の生活費、ゆとりのある生活費は生活保険文化センターの「令和元年度生活保障に関する調査<<速報版>>」を引用 - 収入は夫婦合わせて65歳からの公的年金のみ。
- インフレ率 2%
- 賃金変動率=インフレ率として公的年金は基本的にインフレに連動。但し、マクロ経済スライド(スライド調整率1.3%と仮定)による実質的受給額の減額を考慮。
- 貯蓄・資産運用の年利回りはインフレ率と同じ2%とする。
基本的な条件等は、定年退職時の老後資金を計算した下記記事と同じです。
必要な資産額
公的年金(厚生年金+夫婦の基礎年金) 現在価値で年額262万円の場合。
先ず、65歳からの公的年金(夫の厚生年金、夫婦の基礎年金の合計)として、夫会社員、妻専業主婦の場合の平均値 月額 218,462万円、年額にして262万円の場合で計算してみます、
*平均値は厚生労働省(令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況)より。
退職年齢 | 最低限の生活 (年間支出265万円) |
プチゆとり (年間支出350万円) |
ゆとりのある生活 (年間支出433万円) |
45歳 | 7,723 万円 | 11,623 万円 | 15,451 万円 |
46歳 | 7,399 万円 | 11,215 万円 | 14,959 万円 |
47歳 | 7,074 万円 | 10,805 万円 | 14,466 万円 |
48歳 | 6,748 万円 | 10,394 万円 | 13,972 万円 |
49歳 | 6,421 万円 | 9,983 万円 | 13,477 万円 |
50歳 | 6,094 万円 | 9,571 万円 | 12,982 万円 |
51歳 | 5,766 万円 | 9,158 万円 | 12,486 万円 |
52歳 | 5,437 万円 | 8,744 万円 | 11,989 万円 |
53歳 | 5,107 万円 | 8,329 万円 | 11,491 万円 |
54歳 | 4,776 万円 | 7,914 万円 | 10,992 万円 |
55歳 | 4,445 万円 | 7,498 万円 | 10,493 万円 |
56歳 | 4,112 万円 | 7,080 万円 | 9,992 万円 |
57歳 | 3,779 万円 | 6,662 万円 | 9,491 万円 |
58歳 | 3,445 万円 | 6,243 万円 | 8,989 万円 |
59歳 | 3,110 万円 | 5,823 万円 | 8,486 万円 |
60歳 | 2,774 万円 | 5,403 万円 | 7,982 万円 |
55歳以下で早期退職し、ゆとりある生活を送ろうと思ったら、1億円以上の資産が必要という事です。
一方、最低限の生活であれば、45歳、7,605万円の資産額で早期退職できます。
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早期退職による厚生年金の減額を考慮した場合
おっと、ここで忘れていけないのが、早期退職、アーリーリタイアすると厚生年金が減ってしまう事です。(国民年金は60歳になるまで保険料を払う前提)
そこで、この厚生年金の減額分を計算に入れてみます。
年金の削減額は、概ね下記の式で計算できます。
(60歳 - 早期退職年齢) x 12カ月 x 平均標準報酬額 x 5.481/1000
平均標準報酬額が月額43.9万円(賞与込み)と仮定し、この値を使って年金削減額を求め、再度、早期退職に必要な資産額を計算してみます。
*43.9万円は厚生労働省公表の「令和3年度の年金額改定についてお知らせします」記載の平均的な収入より引用。
退職年齢 | 最低限の生活 (年間支出265万円) |
プチゆとり (年間支出350万円) |
ゆとりのある生活 (年間支出433万円) |
45歳 | 8,462 万円 | 12,363 万円 | 16,190 万円 |
46歳 | 8,098 万円 | 11,914 万円 | 15,658 万円 |
47歳 | 7,732 万円 | 11,463 万円 | 15,124 万円 |
48歳 | 7,363 万円 | 11,010 万円 | 14,587 万円 |
49歳 | 6,993 万円 | 10,554 万円 | 14,049 万円 |
50歳 | 6,620 万円 | 10,097 万円 | 13,508 万円 |
51歳 | 6,246 万円 | 9,638 万円 | 12,966 万円 |
52歳 | 5,869 万円 | 9,176 万円 | 12,421 万円 |
53歳 | 5,490 万円 | 8,713 万円 | 11,874 万円 |
54歳 | 5,109 万円 | 8,247 万円 | 11,325 万円 |
55歳 | 4,726 万円 | 7,779 万円 | 10,774 万円 |
56歳 | 4,340 万円 | 7,308 万円 | 10,220 万円 |
57歳 | 3,952 万円 | 6,835 万円 | 9,664 万円 |
58歳 | 3,562 万円 | 6,360 万円 | 9,106 万円 |
59歳 | 3,169 万円 | 5,883 万円 | 8,545 万円 |
60歳 | 2,774 万円 | 5,403 万円 | 7,982 万円 |
支出額に関わらず、45歳退職で740万円、50歳で526万円、55歳で281万円、必要な資産額が増えます。
早期退職される方は、給与がなくなるだけでなく、厚生年金の受給額も減額されるという事を頭に入れておいてください。
尚、早期退職による厚生年金減額の詳細は下記ページをご覧下さい。
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まとめ
最低限の生活であれば、45歳で8,462万円、50歳で6,620万円の資産があれば早期退職・アーリーリタイア可能という結果です。
あくまで、いくつかの仮定のもとに計算した結果ですので、特に若い方程、誤差が大きくなる事をご承知おきください。45歳と言えば、65歳の年金受給まで20年、その時、年金制度がどうなっているかなんて予想もつきませんし、ひょっとしたら受給年齢がさらに引き上げられてしまう可能性だって否定できません。
早期退職・アーリーリタイアなんて全く考えていない方、もし、それぞれの年齢に応じて上の表のような資産があれば、生活の為ではなく、後は生きがいとして仕事できると言う見方も出来ます。この金額を貯蓄・資産運用の目標とされるのも良いのではないでしょうか。
尚、以上の計算は少なくとも資産運用としてインフレ率と同等の利回りを確保する事が必要です。
投資によってもっと高い利回りを追求するなら、もっと少ない資金でも早期退職できますし(勿論、投資にはリスクがありますが)、
リスクを取りたくない方でも、少しでも金利の高い定期預金に預けるなどの工夫が必要です。
定年まで働いた場合の必要な老後資金については下記ページをご覧下さい。