前回に引き続き、(ペーパー)ファイナンシャルプランナー「だいすけ」がおくる「人生のキャッシュフローを作ろう」シリーズ2回目です。
今回は、インフレの影響と老後の収入の柱となる年金を追加してきます。
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インフレ率を考慮しよう。そして消費税も。
退職後に怖いのはインフレ。政府や日銀が目標としているインフレ率2%だと、20年で物価が約1.5倍にもなります。言い換えれば、資産価値が1/1.5になってしまうという事です。勿論、資産をインフレ率に負けないよう運用すれば良いのですが。
前回の記事の例では、退職後の支出は300万円で、生涯一定としていますが、これにインフレ率をかけてみましょう。
今の支出が300万円であれば、翌年は、300万円 x (1 + インフレ率)、さらに、その翌年は、300万円 x (1 + インフレ率)2、という感じで。
出来れば、インフレ率は変数としておいて、後で自由に変更できるようにしたおいた方が何かと便利かと思います。
因みに「だいすけ」の場合、政府・日銀の目標通り、2%をベースに計算してます。
それと、消費税アップも考慮しなければいけません。10%へのアップは取りあえず2019年10月に延期されましたが、いずれアップされる事は間違いないでしょう。そして、これが打ち止めとなる保証はどこにもありません。ただ、将来の消費税率を予測する事は不可能ですので、「だいすけ」はインフレ率2%の中に消費税アップも含まれると考えて計算しています。
ただ、消費税アップが明確になった時は、今回であれば2020年の支出にはインフレ率2% x 消費税分10%/8%をかけるようにしています。
自分の年金、いくらもらえるかご存知ですか?
前回の記事の表の中では、65歳から収入200万円と記入していますが、これが年金に相当します。(勿論、金額は適当な数字です)
当然、不動産所得など他の所得がある方は、年金にその所得をプラスします。
ねんきんネットで自分の年金額を確認しよう。
毎年、誕生日月に送られてくる「ねんきん定期便」、これでも年金の見込額がわかります。ただ注意しなければならないのは、50歳以上の場合、現在の加入条件が60歳まで継続することを前提に見込額を計算している事です。早期退職をする場合は、当然、条件が変わりますので、この見込額も変わってきます。
未だ使われたことのない方は、年金番号、住所氏名などの情報を入力し利用申込を行います。5日程でIDが郵送されてきますので、その後は、いつでもログインし、自分の年金情報を見ることが出来ます。
「ねんきん定期便」と異なるのは、自分で加入条件を変えて、将来の年金額の試算を行えることです。
早期退職し、その後、無職または個人事業主になる場合は、退職した後の年金加入情報を国民年金に変えます。これで、自分の年金見込額が分かります。
ところで、退職するという事は、厚生年金から脱退することにもなります。厚生年金は、会社が保険料を半分負担してくれる非常にお得な制度です。厚生年金から脱退することで、年金がどの程度減るか試算・比較してみて下さい。退職して失うのは、給与だけではありません。厚生年金から国民年金に代わる事も大きな収入減の要素となります。早期退職を考える場合は、この損失も覚悟しておく必要があります。
年金にもインフレ率を考慮しましょう。
「ねんきんネット」で自分の年金がわかったら、それをキャッシュフロー表に記入しましょう。多くの方が65歳からの受給かと思いますので、65歳以降の収入欄に、その年金額を入れていきます。それと配偶者がいる方は、その年金も足した額ですね。
そして、年金額にもインフレの影響を加味していきます。
「ねんきんネット」で試算される年金額は、今現在の基準に基づいた額ですので、将来、自分が受給者になった時の金額とは異なります。物価が上がれば年金額も上がります。ただ、マクロ経済スライドという制度が適用されます。簡単に言うと、物価が上がっても、そのまんま年金を上げるのではなく、ちょっとだけ差引きますよ、という制度です。
正確には、
前年度の改定率 x {1+ (物価変動率または名目賃金変動率)} x (1 - スライド調整率)
で決まります。このスライド調整率というのが、差し引く分で、現役の被保険者の減少と平均寿命の延びから計算されます。
厚労省の資料によると、2015年から2040年の見込みでスライド調整率1.2~1.3%となっています。
そこで、例えば、現時点での年金見込額が年間200万円、インフレ2%、スライド調整率1.3%、今55歳とすれば、
65歳時にもらえる年金額は、
200万円 x 1.02(65-55) x (1-1.3)(65-55) となります。
あるいは、200万円 x ( 1 + 0.02 - 0.013 )(65-55)と、ちょっと単純化しても大きな違いは出ません。
*インフレ率=物価変動率=名目賃金変動率と仮定しています。
66歳の受給額は、さらに、この変動率をかけた値になります。
支出にインフレ率をかけていったように、もらえる年金にも上記係数をかけていきましょう。
「だいすけ」の場合
「だいすけ」のキャッシュフロー表では、基本的にはインフレ率 2%、スライド調整率1.3%で計算していますが、公的年金が今後どうなるかわからないという不安から、ちょっとマージンを取って、
インフレ時でも、年金受給時(65歳)までは、現時点での年金額のままとしています。(65歳からは上記式に従って年金額増大)
さらに、現行のマクロ経済スライド制では、スライド後、前年度マイナスになったら前年度と同額、あるいはデフレ時はマクロ経済スライドを発動しないというルールになっていますが、「だいすけ」のキャッシュフローでは、いかなる状態でも、スライド分減額されるという計算にしています。
(「だいすけ」は、インフレ率2%だけでなく、インフレ率をいろいろ変化させ計算していますので、インフレ率がスライド調整率より低い場合に上記独自のルールを使っています)
以上、今回は、支出に対するインフレ分の加算、マクロ経済スライドを考慮した年金額の見積もりについて解説しました。